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「あーもう!塾なんか行きたくねぇよ‥」
涙ながらに言ったこの少年は中二の翔。
頭が悪いから塾に行くようにと親に言われ、いやだ!と怒鳴りここまで走ってきた。
「確かに頭は悪いけどさ‥塾なんか行ったら遊べないじゃんか‥」
膝を抱えて頭をうずめる。
「みんなも塾とか行くのかな‥。ずっと遊んでたいよ‥」
サワサワと葉の揺れる音がした。
森の中だから当たり前と言えば当たり前なのだけれど、いつもは聞こえない場所からの音。
翔は顔を上げて音のする方を見た。
小さな苗木の葉がそよそよと風に揺れていた。
「こんなとこにあったっけ?」
首をかしげる翔。
しばらく見ていると笑顔になった。
優しくその幹に触れる。
「お前小さいな。でもちゃんと生きてるんだよな。何が一番いいのかわかんないけど俺がんばるよ。俺なりにがんばる。だからお前もがんばれよ。またな」
翔はそう言って立ち上がり、走ってその場を去った。
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