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少し日はさかのぼる。
荒廃した大地の中にぽつりと1つの村があった。全く人の気配がない村。およそ、幽霊の住み家にでもなりそうな村だった。
たが、そこに一つの声、いや泣き声を響かせる家があった。
「お母さーん、お母さーん・・・」
少女が泣いていた。
少女の前には、ただ布団が敷いてあるだけだ。
・・いや違う、中には人がいた。
痩せ細り、肌の色はひどく、そのため布団の中にあるそれを人間であるとは認知できなかった。
それはか細い声で何か少女に伝えようとしていた。
「東へ、東は温か・・い」まさに死にゆく者の声というようなかすれた声だった。
「東・・東ってどこ。わかんないよ・・・お母さん連れてって・・」
少女は泣くのをこらえて尋ねた。
「ごめんね、お母・・さんは。一人で、東・・へ。東は・・太陽がのぼる。・・ごめんね」その後、そこには冷たい固まりが残るのみだった。
半日後、泣き叫んでいた少女はもうそこにはいなかった。村は、もう村ではなくなり、荒廃した大地の一部と化していた。
だが、まだ何かがたくさんある。
なんだろうか・・・・、よく見ると、村中に冷たく、そして汚れた人のような物が落ちていた。
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