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「さっきいったじゃないか早くしてくれ。早くしないと電気が・・」
少女は少しふくれていたが、力一杯それを回しはじめた。
「電気って、何。」
少女はいらついた口調で呟いた。
「んっ、何か言ったかい。」
「別に・・」
いつの間にか、空は薄暗闇に包まれていた。
「やった、これぐらいでいいよ。やっと動けるよ。」
ロボットはまるで人間のように躍動感溢れる口調で言った。表情も豊かだ。
「やっと・・」
少女はくたくただった。ずっと一人で歩いてきたのだ。
「よし、これからロボットとは何かを教えてあげよう。」
妙に張り切っていたが、少女はすでに寝息をたてていた。
「そういえば、人間は動くと疲れて寝るんだったな。本当に不便なもんだ。だから・・・・」
そういって愚痴をこぼしていると、ふと少女が何か言っているのに気付いた。
「寒いよ・・お母さん」
ロボットは人間が寒いと不健康になることを思い出した。
「本当に不便なものだ」
と言って、ロボットはそっと少女を自分の体に乗せた。
「人間はこうゆう時どう感じてるんだろう。つらいだけなのか。僕達ロボットはつらいということは感じないようにできている。つらいとは何なんだだろうか。人間はなぜつらいことばかりなのに生きようとするんだろう。この子のようにして。つらいとは幸せなのか、楽しいのか。そういえば、楽しいはわかるけど幸せとはなんだろう。ロボットは知らなくてもいいんだろうか」
ロボットはこれまで考えたことがないようなことを一晩中、この少女の疲れ果てた、それでいて何か幸せそうな顔を眺めながら考えていた。
「つらいって、幸せってなんだろう。僕達には一生わからないのか…ないほうがいいのか」
その夜、少女は久しぶりに何も思わず、考えず、ぐっすりと寝れた。
なぜか今日は体が温かい。母との思い出が夢の中でゆっくりと再生されていった。
もう戻れないもの。
戻りたくても戻れないもの。
「お母さん・・温かい」
少女は幸せそうな寝顔だった。
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