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生きる意味…生きるとは何かを知り得た者がこの世にいようか。
過去、確信を持って知り得た者はいないだろう。皆、自分なりの解釈を信じて生きていくのみだ。だが、過去を知ることがそれへ近づく近道となりえるのではないだろうか。それがどんなにつらい過去であろうと…。
少なくとも人間はどんなに辛くとも生きる喜びを選ぶ。そこに喜びを探し続ける。
目を覚ますといつもの荒野が広がっているだけのはずだったが、今日は銀光する人形のおまけつきだった。
「起きたのかい。」
ロボットが困ったような顔で言った。
少女は眠たそうに目をかきながらコクリと頷いた。
ロボットは言った。
「昨日のことはなしだ。すぐに東へ行こう。」
ロボットは歩きだした。少女もふらつきながらついて行く。
「そういえば、東…東ってどんなとこ。」
少女の質問にロボットは。
「素晴らしいところさ。ここみたいに荒れてない。町はきれいで、緑は沢山あり、ロボットが沢山いるんだ。人間だってきれいだし、僕たちに従順だ。僕はそんな素晴らしい所にすんでいるのさ。」
少女は嬉しいそうだったが、少女は一つ疑問に思った。
「じゃあ、なんで今こんな所にいるの。」
ロボットは少し黙り込んだ後、しゃべり始めた。「…それが、僕にもわからないんだ。気付いたらゴミの山に捨てられていたんだ。あの菌の溜まりばにだ、あんな所にいたらロボットだって…」
少女はゴミの山に心あたりがあった。
「東の村の近くにあるの。」
ロボットは顔をしかめた。
「ああ、そこだよ。あの汚染村のある。あそこらヘンはゴミ溜めなのさ。人間もゴミみたいなのばかりだから。みんな僕たちを嫌って逃げ出した連中さ。だから、殺してやったのさ。ゆっくりとね。いらないから。」
言葉が出てこなかった。お母さん達はこの人形に殺された…。信じられなかった。
「お母さん達を殺したのはあなた達…」
泣きそうな声だった。
「ああ、君はあそこの出身なのか。だから汚なかったのか。気の毒だが君たちが悪い、しょうがないさ。でも大丈夫、僕を東まで送れたら、僕の召使いにしてやろう。こう見えて僕は結構地位が高いんだ。君はとても運がいい。」
少女は声がでなかった。それでも、ロボットは終始無言でドシドシと歩いていった。
東へ…。
少女の母の言葉はあたった。確かに東に行けば温かいだろう。だが、これは幸せと呼べるのだろうか。
誰も知らない。
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