1.動かない女。

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食べる手を止め、ルイスがじっとアリィを見た。 「アリィ。食べないのか?」 アリィは少し目を泳がせた。 女が心配そうな顔をしている。 俺はため息を一つ。 「食え。何も入ってねーから」 そう言ってパンを齧って見せた。 アリィは納得いかないような顔をしながらも、パンを少し食べた。 ルイスの奴、あからさまにほっとした顔しやがって。 女もだな。 食事の後、女は部屋も貸してくれると言った。 ただし、ベッドは二つしかないという。 「ええっと…」 「アリィだよ」 アリィを見て口籠もった女に、ルイスがにこっと笑った。 「アリィ。私と一緒でいい?」 ……ぜってぇ嫌だなこいつ。 んな顔してたらバレバレだってぇの。 けどな、わからなくない。 「俺は外でいい」 そう言ってさっさと外に出た。 後は好きにしな。 外で野営の準備をした。 正直、他人の家の中より安心できる。 自分の身を守る自信もある。 しかもここは村の中だ。 街道や森とかで野宿するより危険は少ないだろう。 「……」 人の気配だ。 誰だか予想はつくがな。 ほらな。 むすっとしやがって。
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