この手を離したくない

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父を探して江戸から京都に来て数日。 新選組の監視対象として屯所の中だけで過ごすのにも限界が来ていた所だった…。 土方さんから外出許可をもらった。条件は必ず昼の隊士の巡察と一緒でなければならない。 「早く来なよ千鶴ちゃん。」 「あっ待って下さい沖田さん。」 今日は沖田さんが組長をつとめる一番組に同行する事になっている。 思えば最初、沖田さんに対する印象が悪かった私。すぐに「殺す」とか「斬る」と言う言葉を冗談混じりで使う彼。今こうして一番組の巡察に同行するまでにも色々と苦労した。 そんな事を考えていた私の目にある光景が映った。私と同じくらいの女性が柄の悪い男に絡まれている所だった。 「沖田さん!ちょっと行って来ます。」 「行くって…ちょっと千鶴ちゃん!」 私は女性を助けるために走った。 「やめて下さい!嫌がってるじゃないですか。」 「何だ小僧…しかし男のくせに可愛い顔してるじゃねえか。お前が代わりに付き合ってくれるのか?」 「それは無理だよ…。」 うしろから声が聞こえた。 「お前は新選組の沖田総司!」 「京都の治安を乱すようなら黙って見過ごす訳には行かないなぁ…。」 「くそっ!逃げろ!」 女性に絡んでいた男は沖田さんを見るなり一目散に逃げて行った。 「あの…沖田さん?」 「全く君って子は…ほら行くよ。帰るのが遅れたら土方さんの雷が落ちるからね。」 そう言われて私はすぐに付いて行こうとした。だけど私の手は沖田さんが掴んでいて進めなかった。 「どうしたの?」 「何で手を掴んでいるんですか?」 「君がすぐにいなくなるからだよ…。」 そう言って沖田さんは歩き出した。 たとえどんな理由があってもあなたに掴んでもらっているこの手を離したくはなかったんだ。
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