215人が本棚に入れています
本棚に追加
只今、私は新選組屯所で一人留守番中です。
近藤さんと土方さんは出張中。沖田さんと斎藤さんは巡察中。永倉さんと平助君と原田さんは島原に行っている。
「暇だなぁ…。」
人が殆どいないので自室で独り言を呟いてしまった。特にやる事もないので床に寝転がっている。
その時、部屋の外から声がかかった。
「千鶴…いるか?」
「斎藤さん?どうしたんですか?」
外から聞こえたのは巡察に行っているはずの斎藤さんの声だった。私が部屋の外に出るとそこには斎藤さんがいた。
「巡察はもう終わったんですか?」
「ああ…それよりも…。」
「何ですか?」
斎藤さんの手には紅色の小袋があった。
「これは?」
「巡察の帰りに小物屋に行って買った。お前に似合うと思う…。」
そう言われて渡された紅色の小袋の中を見た。
「わあ…。」
その中に入っていたのは色とりどりの髪紐だった。
「これ本当に全部頂いても良いんですか?」
「ああ…構わない。お前のために買ったのだから…。」
私は髪を結っている髪紐を解いた。
「どうした?千鶴。」
「いえ…折角なので使おうと思いまして…。」
紅色の小袋から桃色の髪紐を出して髪を結う。
「どうですか?斎藤さん。」
「良く似合っている…。」
「ありがとうございます。」
斎藤さんは剣の素振りをして来ると言って去って行った。
私も自室に戻ることにした。自室に戻った途端にその場で座り込んでしまった。
「びっくりした…。」
斎藤さんがあんなことを言うなんて思わなかったから…。只でさえお土産を買って来てくれたことに驚いていたのに…。
でも凄く嬉しかったのもまた事実だから素直に喜んでいたい。
最初のコメントを投稿しよう!