この小さな想いから

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只今、私は新選組屯所で一人留守番中です。 近藤さんと土方さんは出張中。沖田さんと斎藤さんは巡察中。永倉さんと平助君と原田さんは島原に行っている。 「暇だなぁ…。」 人が殆どいないので自室で独り言を呟いてしまった。特にやる事もないので床に寝転がっている。 その時、部屋の外から声がかかった。 「千鶴…いるか?」 「斎藤さん?どうしたんですか?」 外から聞こえたのは巡察に行っているはずの斎藤さんの声だった。私が部屋の外に出るとそこには斎藤さんがいた。 「巡察はもう終わったんですか?」 「ああ…それよりも…。」 「何ですか?」 斎藤さんの手には紅色の小袋があった。 「これは?」 「巡察の帰りに小物屋に行って買った。お前に似合うと思う…。」 そう言われて渡された紅色の小袋の中を見た。 「わあ…。」 その中に入っていたのは色とりどりの髪紐だった。 「これ本当に全部頂いても良いんですか?」 「ああ…構わない。お前のために買ったのだから…。」 私は髪を結っている髪紐を解いた。 「どうした?千鶴。」 「いえ…折角なので使おうと思いまして…。」 紅色の小袋から桃色の髪紐を出して髪を結う。 「どうですか?斎藤さん。」 「良く似合っている…。」 「ありがとうございます。」 斎藤さんは剣の素振りをして来ると言って去って行った。 私も自室に戻ることにした。自室に戻った途端にその場で座り込んでしまった。 「びっくりした…。」 斎藤さんがあんなことを言うなんて思わなかったから…。只でさえお土産を買って来てくれたことに驚いていたのに…。 でも凄く嬉しかったのもまた事実だから素直に喜んでいたい。
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