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後日談
「ウッ(ケツが痛い…)」
中田は呻きながら起きた。
下宿している部屋には三浦がいた。中村もいたはずだが、あの事件から急に存在感が無くなり居ても気付かない事が多くなった。
「下北沢の閑静な住宅街で起きた暴力団員殺人事件、現場では体格の良いサッカーユニフォームを着た青年がライトバンと見られる車輌で走り去る様子が目撃されており…」
テレビでは毎日この話題で持ち切りだ。皆、捕まる事を恐れている。中田は退学して地方の大学に籍を移そうと考えている。三浦も故郷に帰り、地元の精肉会社に就職して、そこで野球部に入部するらしい。中村は…出掛けた形跡はないがこの数日見かけていない。
それから16年経った。中田は同年代に遅れて別の大学を卒業し、塗料を製造する会社に入社した。あの事件は闇に葬られ、時効が来る前にうやむやになった。
そんな中田はたまに今はなきあずま寿しの前に立ち寄る。この日もそこに訪れていた。真夏の暑い日のことだ、汗がながれ眼鏡が曇る。運動から離れた中年の男にはきつい運動である。
ふと、見上げると店の跡地の前に1台のワゴン車が。そしてその車は急発進し、前の黒塗りの高級車に追突する。前の車からは極道風の男が降りて、ワゴン車の男にどなりつけている。やがて車は2台とも発車し、中田だけがその場に取り残された。
「なんなんだこれは…たまげたなぁ」
真夏の悪夢は終わらない(棒読み)
(完)
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