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赤い靄の中だった。仄暗いところだが、靄が濃くて、場所の特定はできない。湿気を含んだ空気は淀み、ひどく生温い感じがした。このままどこへ流れてゆくのだろう。ただ、目的もなく、たゆたっているのがわかる。
視界はゆらゆらと揺れるのに、体はなかった。おかしな話である。意識と感覚はここにあるが、実体はない。では、ここにあるのは何なのか、「僕」か「私」か、判然としない。意識はあるのに自分が誰かは不確かで、ふらふら、ゆらゆらと漂っている。どこから来て、どこへ流れていくのか。教え、導いてくれる者もない。
しかし、不安ではなかった。このまま、こうして身を委ねていることに、不思議と安堵感があった。
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