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そしてすぐに筋骨隆々なたくましい男を連れてくると、一軒のあばら屋に運び込まれた。
とりあえずベッドに放り込まれ、女は筋骨隆々な男を見送りに行った。つまり放置だ。
助けてもらった手前何にも言えないが、なかなかひどい扱いである。しかも、あばら屋だから玄関で話している二人の会話も聞こえるのだか、その会話がひどい。
「太烏(タイウー)、こんな夜中にすまないな」
「いや、未龍(ウェイロン)の頼みならいつだって構わないさ。でも、あんな素性も知れない胡散臭い男を未龍と二人きりにするなど……」
心底心配そうな男の言葉に、女――未龍は小さいが快活な笑い声を上げる。
「はははっ!太烏は心配性だな。あんな大怪我をしてるヤツに何が出来るというんだ。それに、何かされそうになったって、傷を殴ってやるから大丈夫だ!」
「だが……」
「くどいぞ。あまりしつこいと、お前こそ私の家に上がり込んで何かする気じゃないかと疑うぞ?」
「そんな訳あるか!」
太烏の鋭い怒声に、自分に向けられたモノではないと知りながらも、思わずベッドの中で竦み上がる。
しかし、その怒りを向けられた未龍は怯えた気配もなく、すぐに答える。
「冗談だ。わかっているさ、お前がそんなヤツじゃないことくらい。だが、お前も明日は早いのだろう?家に帰って休んでくれ」
「……わかった。でも、油断はするなよ。また明日来る。そん時おかしな様子だったら即追い出してやる」
「本当に太烏は心配性だな。わかった、また明日」
「ああ。じゃあお休み」
「お休み」
そうイマイチ辺りを憚っていない会話を終わらせると、未龍がベッドの側へとやって来る。
「すまないな、待たせた。今手当てしてやる」
そしてどこからか手当て道具を取ってくると、ベッドの横に腰をかけ手当てを始める。
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