0.闇夜の出逢い

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しばし無言で手当てをしていたが、未龍(ウェイロン)はふと顔を上げ、男に話しかける。 「そういえば、お前の名はなんというのだ?」 「……」 「言いたくないか。まぁそれならそれでいいが、何と呼べばいい?」 じっと見つめられ、気まずくなって顔を背ける。 「……好きにしろ」 「じゃあ、ポチ」 「はぁっ!?」 「冗談だ」 未龍はそう言って、ニヤリと口の端をつり上げる。 先程の太烏との会話でもそうだったが、どうも未龍はとんでもない冗談を言うのが好きなようだ。面倒な性格だ。 「そうだな…………じゃあ、月(ユエ)でどうだ?」 「月?」 「そうだ。お前の瞳は、満月の様で美しい」 そう言うと未龍は金色の瞳をじっと見つめ、微笑む。 「月(ユエ)、か……」 「ああ。私は未龍(ウェイロン)。怪我が癒えるまでゆっくりしていくと良い」 「……ありがたい」 そして男――月と未龍は微笑みを交わした。 暗い闇夜は静かに明けていく。
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