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薄暗い部屋の中、複数の白衣を着た男たちが様々な機器を扱っている。
そんな中、最奥にある一番大きなコンピューターに向き合っていた男が、唐突に疑問を投げ掛ける。
「……鴉が逃げ出してどれくらい経ちました?」
視線すら上げずに投げ掛けた疑問だが、途端に部屋の空気は張りつめる。
口調は丁寧だが、声は氷のように冷えきったものだったからだ。
そして一人の男が背筋を正し、畏まって答える。
「はっ!およそ、一年かと」
「ふっ。一年経っても手がかりすら掴めないのですか、貴殿方(あなたがた)は。愚図ですね」
答えを聞いた途端に不機嫌を露にする男に、部屋中の男たちがビクリと怯える。
「も、申し訳……」
「御託はいりません。さっさと行方くらい探し出しなさい」
「はっ……!」
すぐに慌ただしく動き出す人々を横目に、男は小さく吐き捨てた。
「忌々しい鴉だ……」
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