時渡り

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私は目の前の光景にただ唖然とするばかり 一本の椿の木を中心に 梅の木、桜の木が立っていた 花弁の一枚一枚が淡い光を放っていた 私はこの神秘的な光景を前に ―どうして桜や梅、椿がこの時期に? と当たり前な考えを捨てていた いや考えられなかった ふいに風が吹いてきた  サワサワ 桜の花弁が宙を舞う 梅が宙を彩る それはゆっくりと鮮やかに  ブワッ ―椿が揺れる  ―チリン 椿の華が風に揺られて一輪落ちた  カッ!!! 次の瞬間辺りが光に包まれた 光が治まるとそこにはなにもなかった 舞も、桜の木も梅の木も椿の木も 神社でさえも何一つない まるで最初から何もなかったかのように  
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