688人が本棚に入れています
本棚に追加
私は目の前の光景にただ唖然とするばかり
一本の椿の木を中心に
梅の木、桜の木が立っていた
花弁の一枚一枚が淡い光を放っていた
私はこの神秘的な光景を前に
―どうして桜や梅、椿がこの時期に?
と当たり前な考えを捨てていた
いや考えられなかった
ふいに風が吹いてきた
サワサワ
桜の花弁が宙を舞う
梅が宙を彩る
それはゆっくりと鮮やかに
ブワッ
―椿が揺れる
―チリン
椿の華が風に揺られて一輪落ちた
カッ!!!
次の瞬間辺りが光に包まれた
光が治まるとそこにはなにもなかった
舞も、桜の木も梅の木も椿の木も
神社でさえも何一つない
まるで最初から何もなかったかのように
最初のコメントを投稿しよう!