◆夢幻蝶◆

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…残されたのは私と、蝶。 ねえ、どうして消えたの? 私は蝶に問い掛けた。 蝶は無表情だった。 彼女は何も言わず、そこでただ、ひらひらとしていた。 …貴女が消したの? 蝶は黙っていた。 無表情だった蝶の顔が、少し揺れた 私はそれをYesと判断した。 …どうして? あんなに、楽しかったのに! どうして消したの? …ねえったら! 蝶はゆらりと揺れた… …アンナニタノシカッタノハ、 タダノユメニ、スギナイカラ… ただの…夢…? アナタガミテイタノハ タダノユメ。 ワタシハムゲンチョウ ヒトニ、ユメヲミサセルモノ… 夢幻蝶… 嗚呼… だからあんなに綺麗だったのね あの世界も、貴女も… ゲンジツハコンナニキレイジャナイ デモネ ゲンジツダッテ ユメトオナジクライ タノシクナルモノダカラ… ダカラ… …え? いつの間にか…蝶も消えかかっていて… ちょっと待って…! まだ… 蝶はただ笑っていた 世界の何よりも美しかった あの世界の住人よりも。 世界の美しさも、醜さも知った 彼女の笑顔は… 答えをまだ聞けてないよ! ねえ! …蝶は完全に、消えた。 どうして… 嘆く私の肩を、誰かがそっと叩いた 顔を上げる元気もなかったけれど 頭にあの蝶の声が響いた ダイジョウブ アナタニハ、ミエテイル──…      
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