休戦の時

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 ……………。 「おい」 「……………」 「おーい」 「……………」  ……………。 「ルーク、いつまで寝てんの! とっくに朝だっつー……の!」  そう言いながら、かけていた薄い布団を一気に剥ぐ。  ごしごしと目をこすったルークの第一声。 「……んだよ! ノックしてから入ってこいよ!」 「はいはい、おはよーございますが先でしょ。朝から怒鳴ったら血圧上がるよ? あとノックはした」  朝から元気だなぁ……。  そんなオバサン臭いことを考えながら、お坊っちゃんの寝具を適当に整える。 「返事もねぇのに入ってくんなよな!」 「寝てるやつに返事を求められるほど高度な技術はもってない。起こしてもらったんだから文句言うな」 「頼んでねーっつの!」 「まぁ、いいじゃねぇかルーク。今日はヴァン師匠が来てくれるんだし」  後から部屋に入ってきたガイが、ルークの機嫌をとるようになだめる。 「あ! そうだった! ったく、先に言えよなー!」  思惑通りご機嫌のルーク。  扱い易いんだか難いんだか……。  ルークはバタバタと服を着替え、中庭を横切り、部屋を出る。 「っしゃぁ! さっそく飯飯ー!」  見送る二人の使用人。 「はぁ……ルークの世話って意外と疲れるねぇ」 「ははっ……まぁ確かに、もうちっとくらい成長してもいいかもなー……」  苦笑いで答える男の使用人、ガイ・セシル。 「にしても、ガイもお疲れさまだよ。ただでさえ苦労性なのに、相手がルークなんだもんねぇ」 「それ、ルークが聞いたらきっと怒るぞ?」 「あはは、だろーね」  あたしはさっきまでルークがいた場所に笑いかける。  大きく伸びをして、ガイに向き直る。もちろん適度に距離をとって。 「さーて、ルークも珍しく起きたことだし」 「そろそろ行きますか、リュー」 「ん、だね」  もう一人、女の使用人はあたし……リュー。  
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