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「嘘つき」
電話越しに、強い口調でそう投げつけた。
沈黙が流れた。きっと彼は、わたしの言葉に傷ついて、受話器の向こうでうつむいている。それがわかっても、湧き出す怒りはおさまらなかった。
メールが大好きなわたし。彼も好きだと言ったから。
週に一回会いたい。いいよって言ったのに。
――本当は、それが苦痛だったなんて知らなかった。
「嘘つき! メールが好きじゃないなら、最初からそう言えば良かったのに……っ! 週一で会うのだって、嫌なら言ってよ!! なんでちゃんと自分の気持ち言ってくれないの!?」
「……ごめん。言えなかったんだ。君が悲しむと思ったから。君は寂しがり屋だから、いっぱい会わなきゃいられないでしょう? メールも、我慢できないでしょう?」
「……だって好きだもん」
「わかってる。俺も好きだよ」
わたしはしばらく泣いていた。
今までいっぱい無理をさせてごめんなさい。嘘をつかせて……。
でもね、貴方のおかげで優しい嘘もあるんだってわかったよ。
「これからは、無理も嘘もない恋愛をしよう?」
「うん」
電話越し、彼の頷く、優しい声が聞こえた。
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