2/2
93人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
「これ、貸してやるよ」 「え……」  放課後。  隣の席の男子生徒からいきなり文庫本を渡された。つい受け取ってしまったが、生憎本は嫌いだ。 「明日までに読んで返せ」 「え、ちょ……!」  それだけ言って、そいつはそそくさと帰っていく。  なんなんだ一体。  人のまばらになった教室で、私は仕方なく表紙を開いてみた。ベタベタの恋愛物らしい。……余計に無理だこっぱずかしい。結局数行で諦め本を置いて帰った。  そして翌日。どこかそわそわあいつは私を見ていた。 「あ、そういえばこれ面白かった」  放課後、返し忘れていたのを思い出し、彼に本を差し出す。 「……読んでないでしょ?」 「よ、読んだよ!」  私は慌てて感動しただの泣けただのありきたりな褒め言葉を並べるが、彼は口をへの字にして、 「ばーか! 無期限で貸すからちゃんと読め!!」  本を突き返し、そのまま教室を飛び出していった。  わけがわからず、私は再び本を開いた。今度は読まずにパラパラとめくる。  その時、本の間から紙切れが一枚落ちた。  拾って眺めてみたら、なんか脱力。  一人吹き出した。  ――だってそこには薄い字で一言、「好きだよ」の文字。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!