File.11:霊、井戸、脱出にて

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      〔1〕  ジメジメした空気が辺りを支配している7月も下旬の昼下がり。  この季節になると、「暑いーー……」「『暑い』『暑い』言ってるから暑いのよ」、などという、いわばお決まりのような漫才が流行り出す。  そんな中、私は駅前でつかまえたタクシーである港に向かっている。 ――静岡県内浜市。  真夏の避暑地として、ここは都心の居住者からの憧れの的になっている。芸能人や会社重役が別荘を構えているのがテレビで放送されたこともあった。  そんな避暑地に私のような一般市民が行く理由は、休暇を利用しての避暑旅行、というわけではない。ほのぼのとした小旅行ではなく、むしろサバイバルといった方が似合うイベント。 『ミステリ甲子園』  そんな話を聞いたのはいつだっただろうか。
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