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「あ、おはようございます。福山さん」
初也が廊下を歩いていると、角の部屋で屍のように伸びている一人の女中を発見した。
彼女の名前は福山美桜(ふくやまみお)。小顔で目が大きく、女性特有の甘い香りがする方である。
「…戸尾さん?」
彼女は初也を見ると、素早く立ち上がると、身支度を整えお辞儀をした。
「ここで何故しかば…いや、何故寝そべっていたのですか。福山さん」
危ない危ない…屍って言うところだった。女性にはそういう言葉言ってはいけないとソウちゃんに教わったのに。
「あ、気付いてました?ここ寝ると凄く冷たくて気持ちいいんですぅー」
そういいながら彼女は、近くに有ったおぼんを持ち、"失礼しますね"と言ってその場を離れた。
「あれが屯所一美女ですか…。
美女と言うより、不思議な方としか感じられませんでしたが…。と言うのが私の意見です、藤堂さん」
「また見破られたのか、俺」
「当たり前ですよ。バレバレです。きっと隠れることの才能が無いんですよ…諦めたら如何ですか?」
男性には素直に思ったことを伝える――これが戸尾家の家訓だった。
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