詩

命

その柔らかな産毛は血に染まり、その拙い翼は在らぬ方向へ折り曲げられた。
先ほどまで母を求め甲高くさえずっていた声も、もうその魂の抜けた肉片から発する事は無い。
巨大な力に為すすべもなく無惨に圧し潰された体は、在るべき場所で無いアスファルトへまるで張り付くように横たわる。
この命と私の命。何が違うのだろう。

つい数時間、つい数日まで声を上げ、熱を発し、その体を自らの意志で動かしていた命。
ただ、食されるという目的に産まれ、僅かに生かされただけで、私の目の前に肉片となった命。
この命と私の命。何が違うというのだろう。

先人は命に使命があるという。
ならば私の命にどんな使命があるというのだろう。
彼ら、彼女らがその短い寿命をまっとうした使命。
その命を受け継ぐだけの使命が私にあるのだろうか？

死への恐怖と残される者の哀しみ。
一体どちらが辛いのだろう？