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大木にとっては、なんということもない一言だっただろう。
けれど、私は病院から会社まで地下鉄を乗り継いで三十分のあいだに、一大決心をした。
商談のあと、長期休暇願を出した。やりかけの仕事を半泣きの安田に押し付けて、その足で羽田空港へ向かった。
二十時三十分発、新千歳空港行き。久しぶりに故郷へ帰る緊張を紛らわせたくて、暗い機内から滑走路に灯る明かりを数えた。
翼の願いの数のように思えて、必死に数え続けた。
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