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「おはよ、ことこ。」
教室に入ると、仲良しのえっちゃんが話しかけてきた。
「おはよ~。」
私はえっちゃんに挨拶を返す。
えっちゃんは私の顔をじっとみつめると、ため息をついた。
「今日も可愛いね。」
えっちゃんの言葉に私は吹き出す。
「またまたぁ。ありがとね。」
えっちゃんはいつもこんな調子。からかってはニヤニヤ笑うのだ。
けど、からかい文句なのはちゃんとわかってる。
コウちゃんがいる時は少しでも可愛く見られたくて、いつも努力してたけど、今は起きたままのボサボサ頭だし、オシャレに気をつかわない私なんて、キラキラ可愛いクラスメイト達に比べたら月とすっぽんなのだ。
「私は本気だよ。サラサラした茶髪に白い肌、ほんのり赤いほっぺ見てると守ってあげたくなるもん。」
えっちゃんはニヤリと笑う。
えっちゃんが私の事好きでいてくれるのはわかるけど、ちょっと苦笑いが。
「守らなくていいの。自分の事は自分で守れるんだから。」
私がそう言うと、えっちゃんはちょっと悲しそうな顔。
「あんまり無理しないのよ。コウ君みたいにことこを守ってくれそうな人がいたら、ちゃんと前向きに考えな。」
私はドキリとする。
私の心の中のコウちゃんが、えっちゃんには見えているのだ。
「わかってるって。いい男いたら守ってもらうから。」
私は話をそらそうと、笑いながら明るくちゃかす。
コウちゃんはもういない。
その話を私は今でもしたくない。
私が新しい人を求めていない事をえっちゃんはちゃんとわかってる。
でもそれじゃダメだと心配してくれてる。
けど、今の私はコウちゃんとの未来しかいらない。
他の誰かなんていらないのだ。
私は話を変えようと教室を見渡した。
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