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「で、何の用だネル」
ディンは目の前の美少女ーーネル・ジルフェスを多少睨みながら用件を聞こうとした。
「いや、特に用は無いけど」
「じゃあ何故に俺の名前を呼んだ。しかも大音量で」
「あんたが突っ伏してたから。少し気になって」
「……それだけ?」
「それだけ」
それだけって何よ、とネルは言いたげな表情だったが、
「…………」
言い返す気力がなくなったディンは再び机にへたり込んだ。無駄だ、無駄すぎるとばかりに。
何か体力が根こそぎ持ってかれた気分になる。
「ちょっと、どうしたのよ?またあのハゲに怒鳴られたのがこたえたの?」
少し心配そうに聞くネル。ちなみにハゲとはさっきディンに怒号を飛ばした教師の愛称だ。最も、怒鳴ることが多いので嫌っている生徒が大半だが。
それもあるが、今へたり込んでいるのはあなたのせいです、とは言わない。というか言えない。言う気力すらない。
「気にしたら駄目よ。相手はハゲなんだから」
そんなディンの思うことを気付かず、赤いロングのポニーテールを揺らしながら言う。ハゲは仮にも教師だが、ネルにとってはどうでもいいらしい。ネルに限らず、そう思う生徒は少なくない。
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