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「そんなんじゃねぇよ」
「じゃあ何なのよ」
ネルがしつこく聞こうとする。思わず苦い顔を作ってしまう。
ディンはそういうのは好きではない。だが彼女がこういう時にお節介なのは十分にわかっていた為、どうするべきかと頭を悩ませてしまった。
だがふと気付いて辺りを見渡すと、
「おい、見てみろよ…」
「ネルさん。また落ちこぼれのところにいるぜ」
「弱みでも握られてるのか?」
周りから聞こえてくるクラスメートの囁き。それらは全て自分に向けられている。
「…………」
黙り込むネルに、ここぞとばかりにディンは言葉を紡ぐ。
「わかったろ。俺と一緒にいるとお前まで悪い噂立つぞ。学年上位さん。」
嫌みに聞こえてしまう言葉だったが、ディンは加減を知らなかった。
「…………」
「……ネル?」
「………………か」
「ん?何か言ったか?」
聞き返す。短い言葉だったのは唇の動きでわかったが、あいにく読唇術は持ち合わせていない。
だがディンは気付かなかった。
ネルの体が僅かに震えていることに。
「ばかって言ったのよ!!」
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