最も大切なもの

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  『お母さん、乃理の事お願いします』   『はいはい、もう行くのかい? 気をつけて行ってらっしゃい。ノンちゃんの心配はいらないから』     キッチンにいた母がアタシに声をかける。    勿論、母に娘を預けたアタシはなんの心配もしていない。      『ママ、ちゃーんとお婆ちゃんの言う事聞いてお利口さんにしてるから、お土産忘れないでね』     娘が玄関にやってきて笑顔でそう言った。     娘の笑顔に一瞬和む。     『うん、お婆ちゃんの言う事しっかり聞いてね、乃理』     アタシはそう言うと娘を引き寄せ抱きしめた。     『行ってきます』     外に出て歩き出すアタシに、窓から顔を出し娘が手を振ってくれた。     可愛いアタシの娘。     約束の時間よりもかなり早く駅前に着いたアタシは、バスを降りてから携帯を手に電話を掛けた。     『もしもし、真理?』   『うん、静香久しぶり』   『元気にしてるの?』     アタシは元気よと答え、そして続けた。     『静香、ごめんね。たくさん心配させちゃって。 アタシね、これから彼と会うの』   『えっ? なんでそんな事アタシに言ってくるの?』   『最後だから……』       アタシはそう言った。    
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