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『真理? 彼と別れるのね? 真理の中で結論が出たのね?』
静香の声が大きくなった。
『アタシ苦しかった。だからその苦しみから自分を解放してあげるの……』
『良かった……。真理、何が自分にとって大切なのか、何が一番なのか判ったんだね……』
静香の声が震えていた。アタシのために泣いてくれているんだろう。
『静香の言葉でアタシは答を見つけたの。ありがとう』
『何言ってんのよ、真理とアタシは友達だもの、ありがとうなんてやめてよ』
頑張りなさいと言ってくれた静香にもう一度ありがとうと言って電話を切った。
アタシの目に、彼に初めて会いに来た時に入った喫茶店が見えた。
そこへ向かって歩く。
ドアを開け中に入ると、あの日と同じ席が空いていた。
そこに座りコーヒーを頼んだ。
アタシはひとつひとつ想い出していく。
あの日の夕焼け。
掴まれた腕の感触。
彼の唇。
彼の体温。
あの時が一番幸せだった?
運ばれてきたコーヒーを飲みながら、今日も暮れゆく空を眺めていた。
携帯に彼からのメールが来た。
時計を見ると約束の時間が近付いてきていた。
《今、ホテルに着いた》
《番号教えて。今から行くから》
アタシはコーヒーの代金を払い喫茶店を出た。
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