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『ママ、今日何時に帰ってくるの?』
母に出されたミカンを剥きながら小学3年生の娘が聞いてきた。
『ママの帰りは今日は遅いわよ。久しぶりのクラス会だもの。
ノンちゃんはおばぁちゃんとお留守番。ママのいない間に美味しいもの食べようね』
アタシが答えるより先に母が娘に答えていた。
『あ、ママ心配しなくていいよ。乃理ね、おばあちゃんと仲良しだから。ねっ、おばあちゃん』
娘の乃理はアタシにそう言うと、母に抱きつき、その口に剥いたミカンをひとふさ入れてあげた。
『ん~、ノンちゃんの剥いてくれたミカンは甘くて美味しい!』
リビングには母と娘の笑い声が響いた。
『ノンちゃん、じいちゃんにもミカン剥いてくれんか?』
娘は、いいよと言うと、テーブルの籠の中のミカンをひとつ取り、父の横に座るとその小さな手でミカンを剥きだした。
『じゃ、そろそろアタシ行くね。乃理、いい子にしててね。おばあちゃんの言う事聞いてね』
『判ってるって!』
玄関には母が出てきて、靴を履くアタシに声をかけた。
『久しぶりだもの、楽しんでらっしゃい。ノンちゃんは心配いらないから』
何かあったら携帯に、そう母に告げアタシは家を出た。
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