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10分の遅刻なんていつもの事だから、アタシ達はあの時もお喋りをしながら恵美を待っていた。
しかし、20分待っても現れない恵美に静香が電話を掛けた。
電話に出た恵美は開口一番「遅い!」と文句を言った。
彼女は違う店でアタシ達ふたりが現れるのを待っていたのだ。
『あの時の恵美ったら可笑しかったよね、髪を振り乱して走ってきてさ』
あの姿を思い出しアタシ達はまた笑った。
『ちょっと、何笑ってんのよ! どうせ私の事でしょ?』
その声を聞くまで、恵美が現れた事も気付かず笑っていたアタシ達は、彼女を見てまた笑いが込み上げてきた。
『いいわよ、いくら笑われてもそんなの屁でもないわ!』
そう言って静香の隣に座った恵美にアタシは笑いながら教えた。
『恵美、ぷっ……、クリーニングのタグ付いてる……』
『えっ!』
慌てる恵美を落ち着かせ、静香が彼女のワンピースの襟ぐりから顔を覗かせていたタグを外してやった。
『まったく、あんたはどっか抜けてんだから』
『ちょっとぉ、私このカッコでバスに乗って来たんだよ~、いや、恥ずかしい!』
顔を赤くして恥ずかしがる恵美は、それでもアタシ達につられて一緒になって笑い出した。
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