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『今日乃理ちゃんは?……って、真理んとこ自分の親と同居だもんね。大丈夫なんだ』
『うん、お母さんいるからね。恵美のとこは旦那さん?』
そう聞くと恵美は頷いた。彼女の夫は自衛官で、定時になるときっちり帰って来る。
所属する部隊によっては月の半分家にいない人や、定時で帰って来ない人もいるらしい。
静香のところはまだ子供がいない。
御主人は市役所勤務をしている。
『あんたも早く子供産まないとさ、子育ては体力がいるんだから』
恵美が話を振る。
『まぁ、そのうちコウノトリが運んできてくれるでしょ』
『コウノトリ待ってたらいつになるか判んないよ!』
そう言った恵美に、冗談よと静香は笑った。
『あ、ねぇねぇ、葛西君今年は来るかな?』
アタシが振ると恵美が少し考えて、今年こそは来て欲しいと言った。
葛西君とは、高校時代恵美が好きだった人である。
すっかり葛西君の話題で盛り上がる恵美を見て、アタシはホッとした。
恵美は知らない。
静香が不妊治療を受けようとしている事を。
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