プロローグ

11/13
前へ
/188ページ
次へ
「お、おかしいな…俺はあの店から早足でここまで来たのに…」 何より彼は、山ほどあった食材を詰め込む作業自体に、かなりの時間を要するような気がしていたのだ。 しかし目の前のメイドは、大きなエコバック(自前のものだろう)ふたつに食材を詰めて、涼しい表情で軽々と持っていた。 それを踏まえてなおかつ、メイドは彼の前に立っているわけだが。 なんとも、非現実的である。 全てが。 「…目の前にいることが、そんなに不思議ですか」 すごく擦んだ、涼しげな声。 瞬間的に彼は、山奥で流れる清らかな清水を連想してしまった。 「い、いや…別に」 「…私にとってこれらの食材を収納することは、何ら苦ではなく朝飯前と同等です。 一分要りませんです」 …なにやら、メイドが語り始めた。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1077人が本棚に入れています
本棚に追加