1077人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、おかしいな…俺はあの店から早足でここまで来たのに…」
何より彼は、山ほどあった食材を詰め込む作業自体に、かなりの時間を要するような気がしていたのだ。
しかし目の前のメイドは、大きなエコバック(自前のものだろう)ふたつに食材を詰めて、涼しい表情で軽々と持っていた。
それを踏まえてなおかつ、メイドは彼の前に立っているわけだが。
なんとも、非現実的である。
全てが。
「…目の前にいることが、そんなに不思議ですか」
すごく擦んだ、涼しげな声。
瞬間的に彼は、山奥で流れる清らかな清水を連想してしまった。
「い、いや…別に」
「…私にとってこれらの食材を収納することは、何ら苦ではなく朝飯前と同等です。
一分要りませんです」
…なにやら、メイドが語り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!