プロローグ

13/13
前へ
/188ページ
次へ
…しかしながら。 メイドの格好をしている変態と言えど、メイド服が違和感無く似合っているし、簡潔に言えば美しい。 瞬間的に心の惹かれたのを否定するのも、なかなかに難しいのだ。 故に、そんな美しい人を独占したいという羨望から、あのようなでたらめを言ったのかもしれない…。 「…そうですか。 では、お名前を聞いても?」 彼は、首を傾げさせた。 「名前?…名前なんて知ってどうするんだよ?」 「…やはり、助けていただいたのにその方の名前すら知らないなんて、失礼ですから」 さらり、と涼しげに言うメイド。 …果たしてこれは、礼儀正しいというものなのだろうか。 彼にはよくわからない。 自前の黒髪を数回いじったあとに、とりあえず、といった感じに口を開く。 「……巧。石津川巧。 あんたは?」 メイドは一息置くと、優美なその唇を震わせた。 「…メディア、でございますです」
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1077人が本棚に入れています
本棚に追加