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…しかしながら。
メイドの格好をしている変態と言えど、メイド服が違和感無く似合っているし、簡潔に言えば美しい。
瞬間的に心の惹かれたのを否定するのも、なかなかに難しいのだ。
故に、そんな美しい人を独占したいという羨望から、あのようなでたらめを言ったのかもしれない…。
「…そうですか。
では、お名前を聞いても?」
彼は、首を傾げさせた。
「名前?…名前なんて知ってどうするんだよ?」
「…やはり、助けていただいたのにその方の名前すら知らないなんて、失礼ですから」
さらり、と涼しげに言うメイド。
…果たしてこれは、礼儀正しいというものなのだろうか。
彼にはよくわからない。
自前の黒髪を数回いじったあとに、とりあえず、といった感じに口を開く。
「……巧。石津川巧。
あんたは?」
メイドは一息置くと、優美なその唇を震わせた。
「…メディア、でございますです」
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