石津川巧とメイドのお話

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季節は夏。 曇ひとつさえ存在しない、爽やかなライトブルーの空。 騒がしい蝉の鳴き声。 そんな中で、比較的広い公園の広場で戯れる小学生達。 一方の巧は、公園の片隅にあるベンチに座り、その光景を眺めていた。 「…子どもは無邪気で良いですね」 そしてその隣には、メイドがいた。 ……何故、このような状況を招いてしまったのだろう。 今さらながら巧は、自らの愚かさを心の中で嘆いていた。 「…それにしても。 一円を払っていただいた上にこのようなモノまで御馳走になるなんて、本当に…あなたは天使のようなお方ですね」 メディアはしみじみとそう言ったあとに、手に持っているクレープを控え目にほうばる。 その光景を見た瞬間、巧はまるで瞳を奪われたような感覚に陥る。 その姿を何と形容すればいいのか、巧には見当すらつかなかった。 「…別に、このクレープは話相手になってもらってる礼だし、一円くらい大した額じゃないって」
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