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「……」
…その行動に、特に意味はなかった。
彼は何となく、ズボンのポケットをまさぐってみた。
すると、何かが指をかすめる。
すかさずそれを掴む。
そこにあったのは、最も薄く軽い硬貨。
一円だ。
「……」
この行動に意味はない。
下心は皆無。
人間なら当然の、純粋な善意から来る行動だ。
「…仕方ないですね。
では諦めて、商品を戻し――」
そう言いかけて、メイドは言葉を止めた。
常に無表情だったメイドの顔が、少しだけ変化する。
「足りない一円…これで問題無いだろ?」
彼はそう言うと、ポケットの一円をレジの女の子に差し出した。
瞬間、周りの野次馬まがい達が沸く。
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