プロローグ

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そそくさと、彼はまるで逃げるかのように、一目散にスーパーから脱出した。 競歩選手も真っ青の、俊足……いや、瞬足という形容が似つかわしい早足で。 それから彼は、人通りの多い大通りに出る。 クーラーで涼しかった店内とはうって変わり、夏の猛暑が彼を襲う。 「…これじゃあ厄日だぜ、まったく。 あー、おとなしく部活でもしてりゃ良かった。 つか、お人好し過ぎだろ俺」 彼は頭をかき、そんなことをぼやく。 たかが一円とはいえ、相手は見ず知らずのメイド。 一円を渡す手も震えるというものだ。 しかしそれを見事成した彼は、さしずめヒーローか救世主の類だろう。
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