樹海の奥で

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「自分だけ不幸なフリしないでよ。世の中には、あなたなんかと、比べものにならないぐらいに、不幸な人がいるのよ」 「君に言われたくないな。君だって同じじゃないか」 負けずに言い返す。 「私なんか結婚式の日に逃げられたのよ」 彼女は遠くを見ながら言った。 「そんな事で……馬鹿らしくないか?生きようと思わないの?」 「私にとっては辛い事なの!」 彼女は声をあげた。 「辛い?……どこがだよ。じゃあ聞くけど、君いじめにあったことある?」 女は答えない。 「無いだろうね。僕はあるよ。辛かった」 何となく不幸自慢になって来ている。 だけど、そんな事はどうでもいい。 「ならあなたは、親と血のつながりのない私の気持ちわかる?」 女も黙っていなかった。
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