過去なんて

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「お、今流れたよな!」 「……どこ?」 「ほら、あの辺! ほら、また!」 「ホントだ、見れてよかった……」 「……ふふふ。可愛いなぁ」  この十年ほど笑うことの無かったアリエスが、久しぶりに笑ったのは、初めて会った男子の前でだった。  本当なら、見るつもりはなかった獅子座流星群を、自分の言葉を隠すための言い訳に使ったその星を、見ず知らずの男子と、笑いながら二人で見ている。  奇跡にしては小さくて、偶然にしては出来すぎている、そんな状況。 「……私も、お願い事くらいしてみるか」  そういうと、アリエスは、心の中で小さく小さく三回願った。「私に生きる理由をください」と。それは、自分の望まないことであった。だが、今はまだ生きなければならないと、そう思ったが故に、生きる理由を願った。
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