過去なんて

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 その母親に問いを投げかけた後、アリエスはその場を立ち去り、帰宅した。  アリエスは帰宅後、ばたりとベッドに身を投げ出し、眠気に身を任せ、眠った。今日はいろいろありすぎ、疲れたのだろう。  眠りにおちた後、数刻の後にアリエスは夢を見た。またあの、頭に流れ込んでくるような嫌な声がする夢だ。  だが、これは母親からの伝言だと、そう信じていた。  ――アリエス。人を選んだのは貴女です。故にそれは、貴女の決めることですよ。私に問うのは間違っています。自分の決めた人ならば、信じて突き進みなさい。それは必ず貴女の助けとなるでしょう。悪い方向に傾くことなど……ありえません。 『母様? 貴女は母様なのですか?』  ――それに答えることは、できません。それを聞いたところで貴女は覚えていることもできないのですから。さあ、私の可愛い娘よ。今一度眠り、明日に備えるとよいでしょう。私が手を貸せるのも……もう数えるほどなのですから……。  アリエスが聞いたのは、確かに言った『私の可愛い娘』という一言だった。 『……ありがとう、母様……』 「……寝ちゃった」  ふと、アリエスの眼が覚めた。前触れはあった気がするが、覚えてはいない。少し寂しい気がした。目が覚める前触れを感じる前に、大事な何かを聞いた気がした。本当に聞いたかもわからないが、そんな気がしたのだ。 「……私、疲れてるのかな? まあ、恵一に会った所為……で……?」  恵一。その名前がなぜか頭に引っかかった。 「……そうだ。恵一を生きる目的とする意味が返ってきたんだ! ……でも、重要なのはそこじゃない? ……そのあとよ。そのあとに何かがあったわ。本当に何も思い出せないけど」
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