過去なんて

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 アリエスは必死に頭を捻り、答えを導き出そうとした。 「ぐむむ……母様……関係のことだった気もするけど、違った気もするのよね……。というか、母様関係のことだったとして、一体なんだったのかしら?」  何度頭を捻っても、出てくるのは疑問ばかりだった。  数分間考えた後、思い至った答えは……。 「この話はなしね。いつか思い出す時も来るでしょう、多分」  と、自分の中で納得することにした。と、その時、ふと窓の外に目が行った。理由はない。あるとするなら、何かに呼ばれた気がした。  ただ、誰にも呼ばれてはいない。誰もアリエスなど呼ばないからだ。だが、 「……恵一……」  窓の外に見えた一人の少年。それは屋上であった少年の姿に間違いはなかった。ただ、アリエスを呼んだりはしていない。どこかに歩いて行こうとしているだけのような、そんな足取りだ。おそらく目的地などは存在していないのだろう。  時折後退してみたり、くるりと反転してみたり……。  規則性がなく、目的が全く定かではないと思しき少年は、何を思ったか、ふとアリエスの方を見た。何かに呼ばれたように首をかしげながら、アリエスを見た。そして、 「アリエスさん、こんばんは」  と、口が動いた、距離的な問題から一切声は聞き取れないが、はっきりとそう、口が動いていた。それを見ると同時に、足は動いていた。恵一に会いたいと、まるでそう言っているように、走って恵一のもとへ向かった。
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