過去なんて

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「本当に? 誓って? 例えば私のこんな貧相な体でも好きになれるっていうの?」  そう、はっきり聞いていた。好きになれるかどうか。そんなことを聞くなど、少し前のアリエスでは考えられなかっただろう。  多分それは、恵一の影響、というより、夢の影響なのだろう。人を選んだのはアリエスで、後悔などするわけがない。そんなようなことだ。曖昧だが、アリエスはそんな風に憶えていた。  だから、こんなことを、聞いたのだろう。 「ア……リエス……さん? 何を言っていらっしゃる?」  あまりにも驚いたのだろう、恵一は、乙女よろしく顔を真っ赤にして照れた。 「そ……それは、俺がアリエスさんを好きになるかどうか、ってことだよね?」 「……そうとらえて貰っても構わないわ」  照れて言う恵一を見て、アリエスも若干顔を赤くした。 「な、なによ? そこで沈黙しないでよ。私がなんか恥ずかしいじゃない。この夜風に吹かれて適度に涼しいからいいものの、真夏の昼間だったら顔から火を吹いて失神してもおかしくないわ」 「言いすぎだよ……アリエスさん……。で、でも、お、俺はアリエスさんなら好きになれるよ。うん、絶対。それに、貧相な体なんかじゃないよ。アリエスさんは、スレンダー美人なんだよ。胸を張っていいことだよ!」  その言葉に、アリエスは一度笑顔を見せ、そのあとに喜びと怒りの入り混じった声と表情で言った。
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