過去なんて

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「お、俺なんかでよければ晩御飯、ご一緒させてください」 「……分かったわ。でも、敬語じゃなくていいのに……。よし、これから敬語、禁止ね。当然、アリエスさんって呼ぶのもだめよ? アリエスって呼びなさい。いいわね?」 「……分かったよ、アリエスさ……アリエス」  うん、と、アリエスは微笑み、恵一を家へと招き入れた。  アリエスの家には余分なものは一切なかった。いや、無さすぎた。これでは生活に支障が出るのではないか、と言うほど何もなかった。必要最低限のものはある程度そろっているようだが、それだけだ。本当に何もない家だった。 「和洋中、どれがいい?」 「……洋食、かな。うちではあまり出ないし」 「そう、分かったわ。……あ、どの道ここではご飯食べないから、私の部屋に行っといて。ここの部屋出て、一番最初の扉の、左側ね。二階に行ったら……斬首よ」 「……うん、了解」  恵一は言われたとおりに部屋を出て一番最初の左側の扉に入った。そこは、先ほどまでの部屋とは完全に異なっていた。余分なものが多い。と言うと失礼だろう。簡単に言えば、女の子らしい部屋だった。
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