過去なんて

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 そんな話をしているうちに夕食はすでに平らげてしまっていた。どちらが。ということは無い。二人ともが、だ。  片付けを手伝いたい。と言って、半ば強引に恵一が立ち上がったため、無下に断ることも出来ず、現在はしかたなく二人で台所――この場合はキッチンだろうか――に立っている。ものの数分で終わるような仕事を、会話もなく、ただ淡々と進めていく。 「……」  恵一は、ふと、アリエスの横顔を見た。不意に、なぜか見たくなったのだ。 「……何?」 「なんでも、ないかな」 「? 変な恵一ね」  首をかしげ、またすぐに洗い物を始める。気の所為か、光の加減か……アリエスの顔は少し紅くなっているように見えた。  洗い物を済ませて数分後、さすがに遅いと妹たちが心配するから、と言って恵一はアリエス宅を若干名残惜しそうに去って行った。しかし、足取りは軽く、とてもうれしそうだった。
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