死にたがりの少女

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 学校内にチャイムの音が当たりに鳴り響く。その音で、少女はハッと目が覚めた。 「まだなの……? まだ貴女は、私を死なせてはくれないのね?」  誰も居ない虚空の空間に向かって独り言を呟いた。  少女がいるのはどこかの屋上……チャイムが聞こえたことを考えると、授業中である、もしくは授業中であったであろうと思われる。  にもかかわらず、少女は、ひとつだけ伸びと欠伸をし、日光の当たらない物陰へと体を動かしていく。  移動する際に風が吹き、少女の長く美しい金の髪を優しく撫でていった。整った顔立ちに、少し吊り目で青い瞳、それらが日本人でないことを知らせていた。  物陰へと移動した少女は、 「私は、早く楽になりたい。私は化け物なのだから……」  そう呟き、青い空を見上げた。海の色が溶けて、青く澄み渡っている空を。カチャンと屋上の扉の鍵が開かれるのも一切気にしないで。  誰も自分のことなど気にもしないと、そう思い込んでいたから。しかし、少女はある物を先ほどまで居た場所に置き忘れてきたことを思い出した。  アレを忘れたのは、正直言ってまずい。そう感じても尚、空を見続けた。誰もあんなものを気になどしないだろうと高を括って。
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