恋敵と書いてライバルと読む……?

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「マテ、タンコブはさっきのフライパンだ!」 「ならいいです。よかった、にぃさまに怪我が無くて……」  心配しているのか、していないのか分からないが、これが普通なのだろう。ありがとな、と、里奈の頭を、恵一はしっかりとなでてやった。その時、 「おねちゃん、じゅるい! みおも、なでてもりゃう! あにさま、なでてなでてー」 「お、澪、元気に走り回ってるところいいが、この時間は何時もならママとおねむの時間じゃないか?」  奥の方の部屋からひょっこり出てきたのは、里奈よりもさらに小さな少女……というか、幼女だった。  里奈をさらに小さくしたような格好をしており、違いと言えばツインテールではなく、一切結ばずに垂れ流している。と言うことだった。普段は両側でお団子結びにしているのだが、それはどうでもいい情報だろう。 「えっとね、まま、ごほん、よんでくれてたんだけどね、おおかみさんがおばあちゃんのおうちにきたときに、ねちゃったの」  なるほど、と、恵一は納得する。澪は基本的に遅くまで起きていたい時期なのだが、どうしても恵一母に寝かしつけられてしまうのだ。しかし、家事と仕事を両立している身である恵一母は、頻繁に寝かしつけているときに自分が先に寝落ちしてしまうのだ。  あきれ返るほど子供なもので、絵本の類は布団に入って読んでいると、大体三分で寝てしまうこともあるらしい。しかも、家事と仕事の両立。と言っても、食事だけは娘に作らせている(恵一母は壊滅的に料理が下手)のだが。  そんなこんなで里奈に話をつけ、澪を寝かしつけるべく、恵一の部屋へと入って行った。 「じゃ、澪、おとなしく寝るんだぞ? ちゃんと寝れたら、明日にぃちゃんがいっぱいなでてあげるからな」 「……うん、おやすみなさい、なの、あにさま……」  そう言って布団に潜る澪はすでに限界だったようで、恵一は何かを特別してやることもなかった。ただ、頭をなでてやったら眠ってしまった。
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