過去なんて

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「ただ愛を求めていても、その愛は、悲しみと苦しみと嫉妬に焼かれてしまうだろう……か」  アリエスは小さく呟いた。  これは、アリエスがまだ幼いころに誰かに聞いた言葉だった。誰かは覚えていないが。 「私は、まだ他人からの愛を求めているの……?」  アリエス自身に問うその声が、少しだけ悲しく響いた。贖いのために生きてきたアリエスは、他人からの愛を一切その身に受けることなく成長していった。  小学生の頃、友達を作らず、会話をしなかった。  中学生の頃、友達はおらず、生徒から話しかけられたことはなかった。教師に交流が無さ過ぎるぞと怒られたが、その話さえも無視した。  高校に上がって数ヶ月、誰からの話も無視し続けた。このまま、ずっと一人で行こうと、そう思っていた頃、屋上で彼に出会った。槇島恵一に。
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