魔王城の前で

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「ここが魔王城、か……俺はとうとうたどり着いたんだな……」 俺は荒野の真ん中に立つ、凶々しき霧に覆われた魔王城を見上げ呟いた。 とても長い旅だった。 倒すべき魔王、奴が世界に魔族を放ち、人々を苦しめ始めてから五年。 そして、俺が旅に出てから三年の時が流れた。 決して楽な旅ではなかった。 だが、どんな時でも諦めず一人で乗り切りってきた。 旅の途中では多くの人々を救うこともできた。 竜王とやらの出す試練を乗り越え、伝説の竜王の鎧と身の丈程ある竜王の剣も手に入れた。 『黒衣の勇者ローラン』の名を知らない者はいないくらいの勇者になれた。 だが、だがそれでも 「俺は……魔王を倒せるのだろうか……?」 不安は残る。 俺の目は魔王城から離すことができない。 だが、見れば見るほど不安を煽られる。 いままで沢山の勇者がこの城に魔王を倒すために来たが…… 一人として帰って来たものはいない。 そんなところなのだ、この場所は。 「駄目かもしれないな……」 不安に駆られ、ついつい独り言が出てしまう。 だれも反応する者はいないというのに。 だがその呟きに反応する声があった。 「大丈夫ですヨ!ローランサン、私達がいまス」 「そうよローラン、いままでだって何度も辛いことを乗り越えてきたじゃない!」 「フッ……俺達の力を解放すれば勝てないものなどない、そうだろ?」 振り向くといつから後ろにいたのか、初めてみる三人組が後ろにいた。 「おまえら誰だよ!?」 「誰って……仲間デスヨ?」 「おまえらなんか仲間にした覚えはないぞ!?ここまで一人で来たし……」 「何言ってるの!!ちゃんと思い出してみなさい、旅に出た時のことを……そして私達を仲間にした時のことを!!」 「う~ん……?」 「どうデスカ?思い出しましタカ?」 「旅に出た時のことはなんとなく覚えてるんけど、おまえ達を仲間にした記憶はまったくないんだが……」 「オイオイ、忘れたのか?じゃあ旅のきっかけから順番に思い出してみろよ?そしたらきっと思い出すさ」 言われて俺は一番最初、旅に出るきっかけとなったことから思い出し始めた。
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