旅の記憶

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三年前……俺はなんの変哲もない、ただの町に住む16才の少年だった。 「ローラン、ちょっと町にいって果物を買ってきておくれよ」 そう親に頼まれ、町に向かう道の途中の出来事。 そこから運命が狂い始めたんだろう。 俺が歩いてると、空が一瞬で黒く染まった。 「何故空が黒く……?」 その問いの答、それは、翼を生やし、凶悪な牙、鋭い爪を持つ悪魔の大群が空を埋め尽くしているという事実だった。 黒い空から黒い点が散らばり、ばらばらに地面に降りていっている。 そして悪魔の一人は俺の周りにも降ってきて…… 「オ、人間発見デス。じャ、魔王様ノ世界征服のタメに死んでもらいマス」 悪魔は変なイントネーションで喋ると鋭い爪で俺を切り裂きにかかってきた。 「う、うわぁあああああああ!!」 俺はよけることも出来ず、ただただ目をつぶるだけだった。 だが、しばらくたっても痛みが来なかった。 不思議に思って目を開けるとそこには悪魔の姿はなく、白い鎧とマントに身を包んだ一人の男が立っていた。 「大丈夫か少年?」 そういって男は手を差し延べてきた。 「あんたは……誰だ?」 だが男は俺の質問を無視し、 「今は質問に答える暇はない、それより早く家に帰りな、ここは危ない。花粉が沢山飛んでるから花粉症の人は大変なことになる」 「いや、花粉症より危険なことがあるだろ!?」 「じゃ、風邪には気をつけるんだぞ」 そういって男はクラウチングスタートの体制をとり、そこからの素早いスタートダッシュとともに美しいフォームで走り去ってしまった。 「なんなんだ……あいつは……」 とりあえず俺は気を保ち、家に帰ることにしたのだ。 だが、村の方を見ると…… 「村が……燃えてる?」 俺はクラウチングスタートの体制をとり、すぐに走り出した。 あの男程美しいフォームではないが、全力疾走なので気にする余裕はなかった。
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