旅の記憶

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俺が村に着いた時には全てが終わっていて、火が村のほとんどの家を燃やし尽くし、灰にした後だった。 いつも俺が住んでいた家ですら例外ではなかった。 「これは何があったんだ……」 俺は家の前に座りこんでしまった。 「ローラン……」 その時後ろから声をかけられた。 「母さん……よかった、生きてたんだ……」 そこには母さんと、切り傷だらけでボロボロの村長の姿があった。 「ええ、庭で昼寝してたら燃えずに済んだわ」 「人におつかいさせて昼寝してたのかよ!?……まあ無事でよかった!」 その時村長はコツ、と持っていた杖を鳴らした。 「積もる話は後じゃ、今は話すべきことがある」 「そうだ、村長!この村に何があったんですか?やはりあの悪魔達にやられたんですか?」 俺は村長の肩を揺さぶりながら矢継ぎ早に質問をした。 「ワシの切り傷について心配はしてくれないんじゃな?」 村長はしょんぼりした顔をする。 正直うざかったが無視する訳にもいかないのでとりあえず心配するふりをした。 「あ~えっと村長、その傷はどうしたんですか?」 「あんま心配しとらんようじゃが……まぁいいわい。そう、この村の惨状の原因は君の予想どうりあの悪魔の仕業じゃ」 「やはり……!!」 「私がタバコを吸っていたら……あの空を埋めつくす程の悪魔どもが飛んでいて……」 「ああ、僕も見ました。それで降りてきた奴らに襲われたんですか!?」 「いや、びっくりしてタバコを落としちゃんたんじゃ」 「……えっと、それで?」 「そこにたまたまガソリンが流れてて……燃え移ってしまった、そういう訳じゃ」 村長は若干ばつの悪そうな顔をしながら言った。 「……ちなみにその切り傷は?」 「これか?これは事情を話したらキレた若者につけらたものじゃよ?まったく近ごろの若者は……」 「……」 そして村長の傷は一つ増えた。
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