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夜の病院は驚く程静かだ。
一平と私の会話が廊下に漏れないように
声を潜めた。
お互いの耳元で囁くように、
話をする。
添い寝してくれる一平の体は温っかい・・・。
「ねぇ一平?」
「ん?」
「今日はどんな裏技使って付き添い許可とったの?」
「さぁな。裏技は得意だから。」
「ふーーーん。
どんな裏技??」
「知りたい?」
「うん・・・知りたい。だってここの病院の看護婦さん、結構
規則に厳しいし、なかなかわがまま聞いてくれないもん。」
「看護婦さんにわがまま言ってんのおまえ?」
「わがままってほどじゃないけど・・・。
自販機まで飲み物も買いに行けないんだ最近・・・。
看護婦さんに頼んでも、忙しいからあんまり相手にしてくれない。」
「自販機って廊下の一番向こうにある、あの自販機?」
「そう、私にとっては遠い。」
「そんなの、わがままにはなんないよ。
明日、この個室の冷蔵庫が自販機ってくらい、沢山飲み物買って
いれといてやるよ。」
「・・・・。」
一平が、一瞬引いた・・・。
それは分かった。
自動販売機まで歩けもしないあたしに、
同情したかな・・・。軽いノリで言ったつもりが、
なんだか妙に切なくなって、一平の胸に顔を埋めた。
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