悲しいサプライズ

13/31
前へ
/94ページ
次へ
先生の前で強気だったはずの 私の目から涙が溢れていた。 悔しい… 思い通りにいかない… なんで病気になっちゃったんだろ… 「分かったよ…」 泣いてる私を覗きこんで 先生が言った。 「退院も…外泊も無理だけど、一時間だけ、外出なら許す。 そのかわり…看護婦さんとかには内緒だ。 夜の点滴の交換の時間って、九時くらいだろ?俺がここにくるから、その時一度点滴を抜いてあげるよ。もちろん… 一人で外出は無理だ。 俺がその行きたい場所まで車で送ってく。 看護婦が巡回にくるのが0時ごろだから…それまでにはここに戻らなきゃな。少しだけだけど…それでもいいか?」 「本当?」 「うん…そのかわり治療しないなんてもう言うなよ。」 「うん……、言わない……。」 「こんなことがばれたら、俺は多分クビだぞ。だから、誰にも秘密だ…」 「分かってる…。」 「彼氏に会いにいくのか?」 「うん… 彼氏…もうすぐ誕生日なんだ…」 「そっか………」 「先生、これからはいじわるなこと言わないから…だからごめんなさい……。」 「げんきんなやつだな。 俺がお願い聞いたら急に素直になって。」 「だって……うれしいんだもん。誕生日に少しでも会えるんなら、先生には優しくしてあげる。」 先生は、苦笑いしていた。 一平とはまったくタイプが違うのに、一平に似たような優しい言葉を時々くれる…。 あたまっから嫌いなんて思ってきたけど… やなやつでもなさそうだな… 「じゃあ誕生日の夜は、うまくやろうな。」 先生はそう言って部屋を出て行った。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1174人が本棚に入れています
本棚に追加