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先生の前で強気だったはずの
私の目から涙が溢れていた。
悔しい…
思い通りにいかない…
なんで病気になっちゃったんだろ…
「分かったよ…」
泣いてる私を覗きこんで
先生が言った。
「退院も…外泊も無理だけど、一時間だけ、外出なら許す。
そのかわり…看護婦さんとかには内緒だ。
夜の点滴の交換の時間って、九時くらいだろ?俺がここにくるから、その時一度点滴を抜いてあげるよ。もちろん…
一人で外出は無理だ。
俺がその行きたい場所まで車で送ってく。
看護婦が巡回にくるのが0時ごろだから…それまでにはここに戻らなきゃな。少しだけだけど…それでもいいか?」
「本当?」
「うん…そのかわり治療しないなんてもう言うなよ。」
「うん……、言わない……。」
「こんなことがばれたら、俺は多分クビだぞ。だから、誰にも秘密だ…」
「分かってる…。」
「彼氏に会いにいくのか?」
「うん…
彼氏…もうすぐ誕生日なんだ…」
「そっか………」
「先生、これからはいじわるなこと言わないから…だからごめんなさい……。」
「げんきんなやつだな。
俺がお願い聞いたら急に素直になって。」
「だって……うれしいんだもん。誕生日に少しでも会えるんなら、先生には優しくしてあげる。」
先生は、苦笑いしていた。
一平とはまったくタイプが違うのに、一平に似たような優しい言葉を時々くれる…。
あたまっから嫌いなんて思ってきたけど…
やなやつでもなさそうだな…
「じゃあ誕生日の夜は、うまくやろうな。」
先生はそう言って部屋を出て行った。
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