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しばらくして握っていた手が小さく動いた。
顔を上げ彼女を覗き込むと、
重い瞼をゆっくりと開けようとしていた。
「ん………。誰なの…?
……一平……?」
「目覚めたか?」
「………なんで、ここにいるの?」
眠気がまだ残っているのか
状況が把握できていない彼女は、俺の顔をくぎいるように見つめてきた。
「何しにきたの!?」
それは弱よわしい声だったが
俺を拒絶する響きだとすぐに分かった。
「話を聞いてほしんだ…。」
「離してよ!手…触らないで!」
「みく……ちょっとでいいから話…」
「それ以上何も言わないで!
聞きたくない…。聞く必要ないでしょ?
今更何しに来たの?」
彼女が俺の手をふりほどいた…。
力がない細い手には、点滴が今日も繋がれている。
「聞いてくれよ……
たのむよ……」
「聞かなくても分かってるから言わないで。」
「なにを分かってるんだよ!?」
「病気で、手がかかって、抱きたい時にはそばにいない私が彼女なら浮気だってしたくなるよね!」
「違う…違うんだ…」
「お願い…顔見るだけで気分悪くなる…帰ってよ……。もう、誰とでもすきなようになんでもしたらいいよ…だから帰って…」
「みく……」
「別れよ…意味ないよ。」
感情が高ぶったせいか、
呼吸が荒くなった彼女が咳き込んでいた。
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